顧問弁護士のメリットとデメリットを具体的に解説

顧問弁護士を探している会社にとっては、顧問弁護士と契約するメリットが何かは気になるところではないでしょうか。顧問弁護士とのミスマッチを防ぐためにも、会社として顧問弁護士に何を期待するかを整理してから自社の目的に合った弁護士を探すことが重要です。

そこで、顧問弁護士と契約するメリットやデメリットについて具体的な事例を挙げながら説明します。

顧問弁護士と契約するメリット5選

顧問弁護士と契約することのメリットは数多くあります。ここでは、多くの会社に共通するメリットを5つにわけて紹介します。

トラブルを予防することができる

顧問弁護士の果たす役割はトラブルが起こってからの事後処理というよりも、トラブルを未然に防止するための「予防法務」にあります。

気軽に法律相談ができる

会社がトラブルを抱えないようにするためには、日常的に法的な課題について気軽に弁護士に相談できることが非常に重要です。特に、社内に法務部門としての組織が整備されていない会社の場合には、法律に関連する疑問点が発生したら社外の専門家に相談するしかありません。

顧問契約がない場合には、「ちょっと聞ければそれでいい」という程度の相談のためにわざわざ弁護士を探すことはなかなかできません。そうなると、経営者や社員が自分でWEBサイトなどを検索して答えを見つけることになると思われます。

しかし、WEBサイト上の情報はすべてが正しいものとは限りません。また、情報自体が正しかったとしても自社のビジネスの特殊性や個別事情などを考慮した情報ではないため、結果的に誤った判断をしてしまう可能性があります。

これに対し、顧問弁護士と契約していれば、電話やメールなどで些細な疑問を社内の法務部門に相談するのと同じ感覚で気軽に相談することができます。このような相談先を確保しておくことによって、会社が無用のトラブルに巻き込まれるリスクを回避することが可能となります。

契約書ひな型の作成を依頼できる

このような日常的な法律相談のほかにも、顧問弁護士には契約書ひな型の作成、を依頼することができます。

重要な取引に利用する契約書の場合、インターネット上に無料で掲載されているものを利用することはあまりおすすめできません。そもそも契約書というものは、本来は自社のビジネスに合わせてオーダーメイドで作成すべきものです。

例えば、顧問弁護士は会社が取引においてリスクを感じていることやどのように会計処理したいかなど具体的な会社の希望をヒアリングして、その希望を実現するための契約書を作成します。

社内規程の作成を依頼できる

会社の組織がある程度大きくなると、社内規程の整備は欠かせません。社内規程とは、社内の業務遂行上のルールや会社の組織に関するルールなどをまとめたものです。

会社の定款や就業規則は最低限必要となる社内規程です。これ以外にも、会社の規模や業務内容に応じて、取締役会規程、人事考課規程、情報管理規程、出張旅費規程、決裁基準などが定められます。

このような社内規程がない社員によって業務上の処理が異なることにもなりかねず、コンプライアンス上の問題を引き起こしやすくなります。このため、会社の規模拡大を目指す場合には早めに社内規程を整備しておくことが望ましいものです。

社内規程の整備をする際には、社内の業務フロー等を取りまとめた上で、法律や他の規程に抵触しないように注意する必要があります。このように、社内規程の整備には大きな手間と時間を要しますので、社員だけで社内規程の整備を行うと通常業務に支障が生じる可能性が高いといえます。

このような場合に顧問弁護士がいると、社内規程の作成を依頼できます。このように、スポットで法律やコンプライアンスに絡む作業が発生する際に、社内の人員を増やすことなく処理できるというのも顧問弁護士のメリットの一つです。

トラブル発生時にすぐ相談できる

会社を経営する上では、どれだけ気を付けていたとしても完全にはトラブルの発生を避けられません。

会社が遭遇するトラブルとしては、残業代未払いやパワハラ・セクハラなどの労働問題、取引先等からの債権回収、顧客からのクレームや損害賠償請求、SNSなどインターネット上の誹謗中傷など多岐にわたります。

会社でこのようなトラブルが発生したときに最終的な結論を左右するのは初動対応です。万が一、最初の対応を誤ると、その後のクレーム処理が長引くことや風評被害が拡大することになり会社の利益を大きく損ないます。

会社が適切かつ迅速な初動対応をするためには、トラブルが発生した時点でただちに弁護士などの専門家に相談し、会社としての方針を決める必要があります。このような場合に顧問弁護士と日頃から付き合いがあれば、すぐに相談をすることができます。

また、顧問弁護士は会社の事業や経営方針などを熟知していますので、会社にとって最善の解決方針の提案を受けられる点もメリットの一つといっていいでしょう。

秘匿性の高い相談をしやすい

会社経営においては、社員にすらほとんど知らせずに経営陣だけで秘密裏に進める案件が発生します。例えば、M&A、事業承継、事業再生などです。

また、パワハラ・セクハラをはじめとする社員の不祥事や犯罪行為などに関しても会社の対処方針が確定するまでは極秘に検討が進められることが一般的です。

このように会社にとって秘匿性の高い案件の検討をすすめる際には、誰に相談するかを慎重に考える必要があります。万が一、相談した相手から外部に情報が漏洩すれば会社にとって大きな損失となり得るためです。

例えば、M&Aや事業再生に関しては、内容次第では取引先や金融機関からネガティブに捉えられることもあり、信用不安の引き金になることがあります。そこまでではなかったとしても、情報が外部に漏洩したことで案件が頓挫する可能性は十分にあります。

この点、弁護士は弁護士法に基づき相談内容について守秘義務を負っています。このため、会社が弁護士に秘匿性の高い案件を相談したとしても外部に内容が漏れる心配はありません。

このように、秘匿性が高く慎重に扱うべき案件を相談しやすいというのは、顧問弁護士の一つのメリットといえるでしょう。

リスクの高い契約を回避できる

取引先等との契約においては、専門家が見ないと法的なリスクを見抜くことが難しい契約条項というのがあります。

そもそも、契約条項の有利・不利は、民法を始めとする法律に照らして判断されるべきものです。民法上のルールよりも会社にとって厳しい内容であれば、基本的には会社にとって不利な契約と判断されます。

したがって、契約内容が適切か否かを把握するためには、民法などの正確な理解が不可欠なのです。

弁護士であれば当然ながら法律で定められたルールを正確に理解しています。このため、会社が顧問弁護士に対して、契約締結前にリーガルチェックを依頼することで知らずにリスクの高い契約を結んでしまうことを回避できます。

なお、BtoBの契約交渉では、会社間の力関係の差によって不利な条件をのまざるを得ない局面があります。このような場合に顧問弁護士は、契約交渉においてどこまでであれば許容できるのかを検討し、致命的な法的リスクを回避するためのアドバイスを行います。

このように、取引先との力関係の差など契約の背景事情に合わせたきめ細やかな契約書のアレンジを期待できるというのも、顧問弁護士と契約するメリットといえるでしょう。

顧問弁護士がいることが会社の信用につながる

会社が顧問弁護士と契約していることによって、その会社の信用につながるというメリットもあります。

士業の中でも税理士や社会保険労務士とはほとんどの会社が顧問契約を締結しています。これに対し、弁護士と顧問契約を締結していない会社もまだまだ存在します。このため、会社が顧問弁護士と契約していることは、会社のコンプライアンス意識の高さをアピールする手段にもなるのです。

例えば、スタートアップ企業やベンチャー企業の場合には、人材の採用に苦労することが比較的多いのですが、顧問弁護士ときちんと契約している会社であることは、「しっかりした良い企業」という印象を求職者に与えます。

このほか、顧問弁護士と契約していることを取引先に示すことで、取引先に「きちんと対応しなければならない会社」という印象を植え付けられる可能性があります。そうすれば、契約交渉において不利な条件を無理に押し付けられるなどのリスクを回避できることにもつながるでしょう。

顧問弁護士にデメリットはあるか

ここまでは会社が顧問弁護士と契約することのメリットをみてきました。次は実際に顧問弁護士との契約を考えている会社が気にしがちなポイントを中心に、顧問弁護士と契約することにデメリットがあるのかを説明します。

顧問弁護士の費用が高い?

一般的に、弁護士には高額なイメージを持たれがちです。このため、顧問弁護士を探している会社の中でも、高額な顧問弁護士の費用が会社の負担になるのではないかを懸念しているかもしれません。

しかし、顧問弁護士の費用(顧問料)は月額1万円から5万円程度であり、税理士など他の士業と比較しても法外な金額ということはありません。

また、多くの顧問契約では顧問料の範囲内で相談できる時間数が定められており、それを超過した月は超過分だけ、顧問料に上乗せで費用を請求する仕組みとなっています。このため、業務量に応じて顧問弁護士に支払う費用を調整することができます。

なお、顧問弁護士の費用体系については弁護士によって異なります。したがって、契約を検討している顧問弁護士から事前に顧問料の計算方法などについて説明を受けておくとよいでしょう。

このように、顧問弁護士に支払う顧問料は、会社が法務部員を正社員で1人雇用するよりも格段に安価といえます。さらに、顧問弁護士と契約することでトラブルの発生を事前に予防することもできるため、顧問弁護士がいることによって間接的にトラブル対応にかかるコストが削減できる可能性もあります。

したがって、顧問弁護士の費用が会社にとって大きな負担になることはあまり考えにくいのではないかと思われます。

会社の悪いところを指摘される?

顧問弁護士と契約すると、会社のよくない箇所を厳しく指摘されるのではないかと不安に思う会社もあるかもしれません。しかし、顧問弁護士はあくまでも企業の味方としての立場で助言をするものです。

このため、顧問弁護士が会社にとって辛辣な指摘をするとか、頼まれてもいないのに勝手に顧問弁護士が会社に乗り込んで問題点を指摘するというようなことはまず無いといってよいでしょう。

確かに、顧問弁護士は会社の事業などにおけるコンプライアンス上の問題を指摘して再考を求めることはあります。また、契約書についてもリスクが高い内容であれば担当者同士で合意していたとしても修正すべきとの意見を述べることはあります。

ただ、顧問弁護士が会社の意向と異なる方向性の助言をするのは、会社の非を指摘するためではなく、あくまでも長い目で見てそれが会社の利益になると考えるためです。

また、少なくとも企業法務に精通した弁護士であれば、コンプライアンス上の問題がある場合でも会社の事情に合わせた代替案を提案することができます。このため、弁護士に相談することによって事業がストップしてしまうということは実際にはあまりありません。

まとめ

ITベンチャー企業に比較的多いのですが、IPO(新規株式上場)を目指す会社や会社の規模拡大を目指す会社は、スタートアップといわれる創業間もない段階から顧問弁護士に依頼することがあります。

大手企業でもない限りは、社内に法務の専門部署を持っていない会社が大半です。そうなると、法務部門の社員や社内弁護士を雇用するよりも、外部の弁護士と顧問弁護士を締結するほうが実は経済的な負担が軽いことも多いのです。

ただし、企業法務は一般的な弁護士業務とは全く異なる専門性が求められます。このため、顧問弁護士を探す場合には、企業法務を中心的に取り扱っている弁護士かどうかをよく見極めることがポイントです。

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